【東京電力HD】総合特別事業計画の変遷【株主還元は?】

電力

皆さん、こんばんは!
あすかるが生み出した謎の生物、親子丼うまみ(@oyakodon_umami)です。

本日は、東京電力ホールディングスの”事業計画”である”総合特別事業計画”を震災後から順を追って読み解いていく試みです。

事業計画とは、事業の達成目的、目標、計画、工程を示した公文書であり、企業は基本的に事業計画に沿って事業活動を行います。
一端の株主として、現行の事業計画は何を示しているか?株主還元は?に焦点を当てて読み解いていこうと思います。

緊急総合特別事業計画(2011年)

福島第一原子力発電所事故発生後、東京電力はすぐさま事故収束及び損害賠償の方針を示す為、緊急総合特別事業計画を策定しています。
本事業計画は、今後の事業計画策定前の一時的なものとなっており、事故後の東京電力の大まかな方針が示された形となりました。

基本方針

■事故により御迷惑をおかけしている皆様への対応
■東電福島第一原子力発電所事故の収束・安定化
■経営合理化

損害賠償・事故収束は、スリーマイル島事故の教訓を参考にしつつ、取り組んでいる事が分りました。
経営合理化についても人員削減、人件費(給与・賞与)、退職給付にまで踏み込んだ改革が計画されていました。

配当方針

<新規>
東電は今回の事故により多数の国民に被害を与えたばかりでなく、機構から機構法に基づく多額の資金援助を受けるものであるから、国民負担の最小化を図るために、株主に対しても協力を要請することが必須である。

<新規>
東電は、今回の事故発生後の厳しい財務状況等に鑑み、平成 23 年 3 月期につ いて、期末配当を実施しなかった。当面の間、無配を継続することが、株主に対する協力要請となる。

東京電力 緊急総合特別事業計画 P37より

事故発生直後であり、財務状況に鑑みて無配へと変更

総合特別事業計画(2012年)

原子力事故から1年、東京電力の改革計画に関する全貌が公開されました。

基本方針

■責任を全うする
■開かれた東京電力へ
■お客さま・社会と共にエネルギーサービスを変革する

原子力事故の被害者への賠償、電気料金、安定供給について電力会社としての責任を全う。
企業の客観性や透明性の確保、情報発信の積極的推進。前例主義、部門主義からの脱却。
社会エネルギー動向に合わせた設備投資、最新技術の導入、電気料金価格メニューの拡大。等
東京電力の生まれ変わりの計画を盛り込んだ事業計画となっています。

配当方針

<継続>
配当抑制に対する協力 東電は、今回の事故発生後の厳しい財務状況等に鑑み、2011 年 3 月期期末配当及び 2012 年 3 月期中間配当について、配当を実施しなかった。今後においても、国民負担の最小化の観点から、当面の間、無配を継続することを株主に対して要請する。

東京電力 総合特別事業計画 P90より

引き続き、無配の継続が示されています。文言についても変化はありません。

新・総合特別事業計画(2014年)

基本方針

■責任と競争
■ホールディングス制導入

本事業計画にて、上場企業として取り組んでいくビジョンが明確化されました。
原子力事故賠償は国との責任分担を明らかにし、”企業再生への経営方針”として策定された事故後初の事業計画です。
この”責任と競争”を両立させる為、自らが事業持株会社となり、公的管理下からの脱却の方針が示されています。

配当方針

<継続>
東電は、福島原子力事故発生後の厳しい財務状況等に鑑み、2011年3月 期末以降の配当(中間配当を含む)を実施していない。今後においても、国民負担最小化の観点から、当面の間、無配の継続を容認することを株主に対して要請する。

~中略(HDカンパニー制への移行要請)~

<新規>
さらに、東電は、機構保有優先株式の普通株式への転換及び売却に伴う市場流通普通株式の一層の希釈化についても容認することを、株主に対して要請する。

東京電力HD 新・総合特別事業計画より

特筆すべき事項

本事業計画において、初めて東京電力HDのロードマップが時系列と併せて示されました

ⅰ)「責任と競争に関する経営評価」
ⅱ)「一時的公的管理」から「自律的運営体制」へ移行(2016 年度)
ⅲ)資本市場復帰(2020 年代初頭)、保有株式売却開始(2020 年代半ば)
ⅳ)機構保有株式の全部売却(2030 年代前半)

東京電力HD 新・総合特別事業計画 P13-15 今後の「行程」について より

特に公的管理下から自律的運営体制へ戻れるかがポイントであり、事業計画通りの進展があると評価された場合は、原子力損害賠償機構が保有する株式数を50%未満へ低減すると明記されています。

うまみは、この評価の基準になる財務状況説明において、”柏崎刈羽原発の再稼働”が必須と考えています。

新々・総合特別事業計画(2017年)

基本方針

■賠償
■復興
■廃炉
■収益改善
■共同事業体の設立を通じた再編・統合
■他のステークホルダーの協力
■必要な環境整備

新・総合特別事業計画より3年、賠償費用の増大や電力自由化等、事業環境が大きく変化する中で改めて見直された事業計画が策定されました。基本方針に大きく変更はありませんが、具体的な資本市場復帰へのロードマップは残念ながら削除されました。

配当方針

<継続>
東電 HD は、福島原子力事故発生後の厳しい財務状況等に鑑み、2011 年 3 月期末 以降の配当(中間配当を含む)を実施しておらず、引き続き、株主に対しては、無配の継続を容認していただくことを要請する。なお、今後の配当については、収益・ 債務の状況、賠償・廃炉に係る東電の支払いの実績及び見通しを踏まえながら、公的資本の回収手法と併せて検討していく。

<継続>
さらに、機構保有優先株式の普通株式への転換及び売却に伴う市場流通普通株式の一層の希釈化についても容認していただくことを、株主に対して要請する。

<新規>
今後、共同事業体の設立等再編・統合を進めるにあたり、具体的に株主の同意等が必要になった場合は、当該事項について改めて要請することとする。

東京電力HD 新々・総合特別事業計画 P54より

非常に小さな変更ですが、無配の株主に対する要請の文言にて、”当面の間”という表記が削除されました。

特筆すべき事項

<新規>
その上で、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を実現していき、さらに、企業価値向上に貢献するため、中長期を見据えた更なる取組として、国内原子力事業者との共同事業体の設立等、関係者との協議を重ね、再編・統合を目指す。

東京電力HD 新々・総合特別事業計画 P54より

今回より、共同事業体の設立という文言が加わりました。
これは、原子炉の型であるBWR(沸騰水型軽水炉)に関わる関連メーカーとの共同事業体設立の動きを記載しています。こちらも注目ポイントですね。

第四次総合特別事業計画(2021年)

基本方針

■福島への責任の貫徹
■社会からの信頼の回復

配当方針

<継続>
東電 HD は、福島第一原子力発電所事故発生後の厳しい財務状況等に鑑み、2011 年 3 月期末以降の配当(中間配当を含む)を実施しておらず、引き続き、株主に対しては、無配の継続を容認していただくことを要請する。
今後の配当については、 収益・債務の状況、賠償・廃炉に係る東電の支払いの実績及び見通しを踏まえながら、公的資本の回収手法と併せて検討していく。

<継続>
さらに、機構保有優先株式の普通株式への転換及び売却に伴う市場流通普通株式の一層の希釈化についても容認していただくことを、株主に対して要請する。

<継続>
今後、共同事業体の設立等再編・統合を進めるにあたり、具体的に株主の同意等が必要になった場合は、当該事項について改めて要請することとする。

東京電力HD 第四次総合特別事業計画 P94より

2021年現在、最新の事業計画ですが配当方針について前回からの変更点はありません。
柏崎刈羽原発の再稼働が出来ていない以上、次回策定の”(仮)第五次総合特別事業計画”に期待して、コツコツ積立投資を行っていく所存です。

まとめ

種々の不手際により新・総合特別事業計画策定時に記載のあった資本市場復帰スケジュールから遅れはあるものの、基本的には当時記載された行程に従い、株式市場への復帰を着々と進めているという認識です。

現状で期待出来る文言は、“公的資本の回収手法と併せて検討”という文言です。

公的資金の回収手法は、当初の原子力損害賠償機構の保有株式売却による売却益でしたが、それ以外の回収手法となると、継続保有による配当回収を示唆しているのでは無いでしょうか?

色々妄想が膨らんでいますが、うまみの”激甘々希望的観測”です。
今後共、注意深く東京電力ホールディングスを見守りたいと思います。

うまみが東京電力HDへ積立投資する理由は他にもあります。良ければご一緒にどうぞ!

以上、親子丼うまみでした!

コメント

  1. VITENZI より:

    Great content! Keep up the good work!

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